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旅立ちー奄美から東京へ No.4

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巨大美容室チェーン店での入社式

他の新入生達が、いわゆる普通のスーツに身を包む中、僕は父親からも持たされた大島紬のスーツに大島紬のネクタイ、日焼けした真っ黒の顔、今考えると相当目立ったでしょうね。

僕にとって初めてのスーツでしたので、皆こんな感じだと思っていたのに、皆の注目度が、何か未確認生物を見るように、身体のアチコチに突き刺さる音まで聞こえるようでした。

しかも世界三大織物となった大島紬、軽くてシルクのような柔らかい着心地ですが、スーツとしてはその特典が生かされません(汗)
生地が伸びないので座ったりとか身体の関節を動かす事が出来ないのです。

おまけに、ご丁寧なオーダージャストサイズなもので、ピチピチで更に動けません。
皆が軽やかに動いているのに、何故に僕だけ飛べない鳥のようにジッとそこに留まってなければならないのか、、、(泣く)。

《お父様お母様追加でのお願いです!今日まで育ててくださいましてありがとうございます、どうか船旅と大島紬のスーツだけはお許しくださいませ。》

そして挨拶が終わった後に何人かに話しかけられました。

「君は奄美大島出身なんだね、あそこは東京都になるの?」
いえ、伊豆大島ではなくて、奄美大島です。

「沖縄だよね」
いえ、鹿児島県です。

「電車は走ってないよね」
はい、僕のじいさんはいつも走ってますけど

「海、綺麗でしょう」
ブスではないです。

「暑いでしょう」
はい、自動販売機が熱射病で倒れてます。

「島では裸足で歩いているの?」
そういう方も見かけますが、僕はやけどするので一応草履を履いてます。

もう、だんだん嫌になってきました、どうでも良くなってきました。
東京の人は、こんなにも奄美大島の事を知らないんだとびっくりしました。

そんなこんなで、入社式も終わり、大島紬スーツも誰も知らない奄美大島に送り返しました。(ごめんなさい)

そして、僕が配属される店舗は、出来立ての駅ビルで綺麗な「北千住ウイズ」のある北千住となり、寮も同じ場所という事で、まずは寮に案内されました。

なんと、僕を東京都へ橋渡しをしてくれた姉の同窓生の店長さんは行き違いで辞めてしまっていて見ず知らずの所にお世話になる事となりました。

北千住の駅から5分くらいの所にある1階建て平屋が寮でした、キッチン4畳と大部屋8畳と6畳の部屋です。
奥の6畳の個室は一人部屋で古くからいるという先輩のお部屋でした、8畳の部屋に僕と沖縄出身の2人合計3人が均等のスペースをもって雑魚寝するようなスタイルでした。

奥の個室の先輩は年も7歳位上ですが、ローラースケートのアイドルのような髪型でいつも無駄に明るく「森永のプリンは朝一番で食べるのが絶対美味しいんです」と、いつも熱く語り、カラオケでは「好きですサッポロ」をノリノリで歌う、赤羽出身の優しくて面白い人でした。

沖縄の二人は少しだけ先輩で年も近く話題も合ってとても仲良くしてくれました。
一人は、まつげが長くマッチ棒を5本乗せれるという事を自慢にしてましたが、マッチッヨなのに少し仕草が乙女っぽかったので気持ち悪かったです。

もうひとりは、チェスカーズのフミヤを凄く意識していて、いつも鏡を持っているか自分を写すものを探してそればっかり見ながら話をする感じで、僕のファッションのアドバイスとか髪型とかをブローしてくれたりしてくれました。

さすが美容師達それぞれにキャラが濃くて、ありがたいことに人間関係は恵まれていました。

続く

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